遅きに失したネタが続きますが、ユリイカのジョジョ特集別冊いまさら買いました。ずーっと本屋に平積みされていて気になってたんですよね。
ネットでの評価も叩きがデフォという状況なので非常に興味があって。
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最大の目玉はやはり冒頭の鼎談でしょう。
読むたびに既視感のある質問がどんどん増える現存のインタビューと比べると、(良くも悪くも)オリジナリティが高い内容でした。
個人的には結構楽しめましたね。
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あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『おれは荒木先生の話を読んでいたと思ったらいつのまにか金田淳子の腐った妄想を聞いていた』
何を言ってるのか わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
腐女子自重だとかKYだとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしい劣情の片鱗を味わったぜ…
リアルにヤンデレにつきまとわれる主人公っていうのは、この鼎談の荒木先生の状況を言うのかもしれません。
最初は普通に対談が始まるんですけど、中盤から加入した金田淳子というやおい研究家の方が登場してきたあたりから空気が歪むんですよ。刃牙みたいに。
「わたし仗助と承太郎のコンビが好きなんですね」という発言で「あっやばい」って思ったんですけど、今考えるとこの反応はあまりに遅すぎました。
知ってて買ったんだから漆黒の意志を固めておくべきだったんです。
次々に叩き込まれる金田女史の腐った妄想のコンボ。見よ満タンからこの減り!
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ちょっと引用しますが(以下、(略)および太字は管理人による)、
P24
金田「(略)あからさまに描かれてしまうと妄想する余地がないので興ざめなんです。ハンティングの回にしても、ありえないと 思いますけど、「狩りも終わったし、いくか?ホテル」みたいになっていたら、それはやりすぎ!となっていたと思いますね(笑)」
いきなり凄い「悪いたとえ」を持ち出してきますよね。
彼女のこのターボのかかりっぷりは最後の最後まで一貫していて、
P25
金田「(略)腐女子的には、というかわたしの中では、第六部でプッチ神父というディオのことを真剣に想っているキャラが出てきたところで「ディオ=姫」というのが完成したんです(笑)。娼婦のような立場から成り上がっていくんですけど、その過程で当然さまざまな男達に身体を汚されるわけですが、魂の気高さは失わないんですよね。そんなディオに心惹かれる一六歳のプッチ神父…。最初にディオとプッチ神父がしどけなく一つのベッドに互い違いに寝ながら会話するシーンが出たとき、目を疑うと同時に狂喜したわけですけど、あれは荒木先生としてはやっぱり狙ってのものだったんでしょうか?」
荒木「うーん、そういう風に受け取られるとはあまり思っていなかったかな。(略)」
P26
金田「(略)ディオはもともとはジョナサンのことが好きだったということなんですよね。」
荒木「ああー、そうなるんだ!?(笑)」
金田「自分の持っていないすべてを持っている男、ジョナサン・ジョースターに俺もモノにされたい、ぐらいの気持ちで。(略)」
P27
金田「(略)立ちション好きでいかにもマッチョっぽいアヴドゥルさえもディオには惹かれたわけで、あらゆる男を惹きつけるオーラがあるんですよ。」
荒木「そういう見方もあるのかなあ(笑)。」
金田「……よかった。「そんなんありえねー」ってブチ切れられたらどうしようと思っていたのですが……(笑)」
ブチ切れられたらどうするんだと心中マジレスせざるを得ないシーンです。
タダモンじゃないというか、明らかに後退のネジが外されてますよね。
あと荒木先生めっちゃ困ってる。「(笑)」なんかじゃすまん心境だったかもしれない。荒木先生も一応、
P28
荒木「ただプッチ神父のことをディオが好きだったということはないと思うよ。」
などの発言で弾除けのフィルタリングをしようとしてるんですけど、いかんせん金田女史の持ち弾(=妄想)の手数が多すぎて防ぎようがないんですよ。だってこの直後の金田女史の発言が、
P28
金田「そうですね。(略)俺は何百人もの男たちに慰みものにされてきたんだと。」
荒木「慰みものにされたかなあ(笑)。」
金田「されてますよ!(略)」
だもん…
あまり補足したくないけど、ちなみにこの「俺」の部分はディオのことですね。
「されてますよ!」て!
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本当にアレな鼎談でした。
マッドメルヘナー金田淳子。
こうした腐女子の妄想は広大なネットのどこかに必ず吹き溜まりがあるわけでして、私達は福本漫画やテトリスですらBLに脳内変換してしまう彼女達の劣情を覗き見てきたわけです。
しかし金田淳子氏の凄まじさは、その吐き気をもよおすような劣情を原作者、それも荒木御大に対してダイレクトに発射してしまったことにあります。ある意味では爽快であり、ある意味ではタブー中のタブーに触れやがりました。
ここまでのブッチギレぶりは見てて楽しい。少なくとも私は「金田淳子」の名前はもう忘れないでしょう。
(ジョジョ信者の妄執×腐女子の劣情-羞恥心)×個人の思い込み=金田淳子
という図式が脳内に浮かぶのですがどうでしょう。
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そもそもジョジョというのは、恋愛はおろか異性の介入する余地の無いほど濃密な同性同士の関係性で成り立つ世界であり、この点かなりの異色です。
漢漫画の北斗ですらユリアとかマミヤとかリンとかの恋愛があったのにですよ。
そうしたジョジョをやおい専門家はどう定義するのか知りたかったんですよね。
特に金田氏の
P30
金田「そもそも女性キャラ必ず男性キャラを好きにあるというのが引っかかるんですよね。好きにならなくていいし、女性キャラを好きになっていいと思うんです。女性キャラが男性キャラを好きになるようになるのは、基本的にお話に華を添えるためだと思うんですけど、それは女性読者としてはいらないサーヴィスなんですよね。(略)」
には大いに同意できるところです。
大概のところ男が描く女性キャラは「聖女・娼婦・処女」の三タイプくらいしかいないわけで、そこに勝手に当てはめられて道具扱いされるのが女性読者はむかつくんじゃないかなあと。
で、この考えをどんどん進めていくともういっそのこと、作中に女性キャラが出てきて欲しくないんですよね。
感情移入というのもけっこう体力を消耗する技でして、女性キャラがいると否応にもその目線で自分ならどうするかという思考体操をこなさなきゃいけなくなりますから。疲れるんですよ。
つまりやおいは女としては感情的に安全地帯にいながら、傍から美しい男同士の絡みを愉しむものなんじゃないかと。
やや暴論ですが、少なくとも女として感情移入しなくていいという利点はあると思います。
そうすると結構おいしいネタに見えるジョジョを金田氏はどう談じるのかと思ってたら、結果は彼女のとてつもない妄想連射だったから面食らいます。
特にディオに対する妄執が並じゃない。何を食ったらそんなになれるんですか(愛でしょうか)。
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そういう意味では金田氏が同誌に寄稿している「D/J ジョジョの奇妙な構造と力」もまた、素晴らしくこじ付けと思い込みの力に満ちていたものでした。
ちょっと長くなったんでこれは別の機会に感想を書きますが、狂ってるなりにも筋が通った金田流「俺ジョジョ」です。愛すべきなのかタチが悪いのか…。
「ディオ×ジョジョ」のカップリングは、おそらくは彼女が丹念に思考の練磨を重ねて作り上げたジョジョ論であり、つまるところ彼女からすれば『ジョジョ』とはディオ姫の所産なのだということですかね。
新単語「ディオ姫」がインパクトすごすぎて脳裏にこびりついた。
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最後に金田淳子に対しての感想。
呪詛にしか見えないくらい過剰な愛情をもったこの女性学者はかなりおもしろい存在だと思います。
怒ってるファンが多いんですけど、私はこういうイかれた想像力持ってる人好きなんですよ。
本人にあえてホントうれしかったんでしょうね。可愛らしいオバサンだなあと思いません?
少なくとも、私的には既存の対談のどれよりも面白かったですが。
ていうかファンちょっと真面目すぎませんか?そこまで怒る内容じゃないと思うけどね。
むしろここまで怒りの声が湧くってこと自体、それもまたファンの狂信ぶりを意味すると思うんだけど。
だいたいこんな濃すぎる漫画の熱狂的ファンが普通の嗜好であるはずがないわけで。
むしろ彼女の迷いなき態度こそ我々は学ぶべきなのですよ。
責任は取りませんけど。
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まとめ。
過去に生物の授業で習っていた「すみわけ」っていう言葉をなんとなく思い出してました。
ここまで言っておいてなんですが、金田さんには原作者との棲み分けが必要だと思います。
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